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ヴェルナー・パントン『FUN SHELL』| 名作家具調査隊

ヴェルナー・パントン『FUN SHELL』| 名作家具調査隊

シャラ、シャラシャラ…。

FUN SHELL(ファンシェル)は、照明なのに気品あふれる音色を奏でる。光が透けるほど薄く削られた真珠母貝のプレートは、まるで深海に潜む人魚たちが身を寄せ合っているよう。ふとある絵が浮かぶ。サンドロ・ボッティチェッリの名作『ヴィーナスの誕生』だ。

FUN SHELL

以前取材させていただいた熊本市北区武蔵ヶ丘にある『IN THE LIGHT』。代表の野口雄一郎さんがインスタグラムに投稿したこの照明が気になり、翌日にはショールームにお邪魔していた。

ピエール・ジャンヌレのオフィス・ケーン・チェアの様なマテリアル感のあるインテリアとの相性も良い
球形の『VP GLOBE』も、ヴェルナー・パントンのデザイン。ゴリゴリのスペースエイジデザイン

「注文から半年、やっと届きました。綺麗でしょう。今カノです(笑)。これはフロアライトの真鍮フレームタイプで、他にもスチールフレームやペンダントタイプもあります」。と野口さん。

デザインしたのはミッドセンチュリーを代表するデンマークのデザイナーのひとり、ヴェルナー・パントン(1926-1998)。1967年に発表された名作「Panton Chair」は、革新的なアイディアを取り入れた、世界初のプラスチック一体成型の椅子として大きな反響を呼び、その後プラスチックチェアの先駆けとなっていった。

「実はFUN SHELLの元になった同じデザインの照明がすでに存在していたのですが、それは素材が貝ではなくメタル。これも正規品が今も売られています。パントンがマレーシアを訪問した時に、繊細で鮮やかな真珠のような質感の貝殻と出会ったことで、この『FUN SHELL』は生まれました。元々スペースエイジなデザインが得意というか、そういう文脈で語られることが多いパントンのデザインですが、これはちょっと違う系統」。

デザインが異素材に出会うことで生まれた傑作というわけか。やっぱり出会いって大切だな。しかしデザイナーが異素材を許容する触手を、日頃から伸ばしていないと決して出会えるはずはない。

「組み立てるまでは、正直“音”のことはそんなに気にしていなかったのですが、感動しました。それからこの有機的な存在感と、折り重なる貝を透過する光のグラデーション。その美しさにも痺れました。電球1つなのでそんなに明るくはないです。照明としての機能性だけでなく、これはもうひとつのオブジェ。存在感が抜群なんですよ」。

僅かな風でもシェルが奏でる音色は、繊細で心地よい。確かにちょっと感動するレベル。存在。そう何かが存在しているような空気感がある。

 

欲しい。と思った。

FUN SHELLが自宅にあるところを想像してみる。私が横を通り過ぎると、そよぐ風にヴィーナスは恥じらうように囁くだろう。部屋を暗くして眺めれば、おそらくニヤけてばかりだろう。

 

野口さんの今カノは確かに魅力的だった。マスクに隠れた鼻の下は、きっと伸びきっている。

ヴェルナー・パントン Verner Panton (1926-1998)

1926年、デンマーク生まれ。コペンハーゲン王立美術アカデミーで建築を学ぶ。スイスに移住後は幅広い活躍をはじめ、フリッツ・ハンセン、ルイス・ポールセン、トーネット、ハーマンミラー、ヴィトラで数多くのデザインを残し、現在も生産されている作品も多い。北欧のモダンデザイン史の中で代表的な地位を確立している。

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