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イサム・ノグチ『AKARI』| 名作家具調査隊

イサム・ノグチ『AKARI』| 名作家具調査隊

イサム・ノグチAKARI

名作の中でも異彩を放つ“明かり”

先日訪問した『IN THE LIGHT』さんで、気になる照明を見つけた。多種多様な個性を持つヴィンテージ家具の中にあっても一際目を引かれたのは、和紙と竹ひごという馴染み深い素材で作られているせいだろうか。柔らかな光を醸し出すその照明、名は「AKARI」という。

イサム・ノグチAKARI

彫刻家 イサム・ノグチ

この照明をデザインしたのは、日系アメリカ人のイサム・ノグチ。「地球を彫刻した男」と呼ばれ、国内外に名を残す著名な彫刻家である。日本人の父とアメリカ人の母の間に生まれたノグチは、その複雑な出自ゆえに、生涯において自身のアイデンティティについて葛藤し続けた。繊細さと大胆さ、懐かしさと斬新さなど、異なる印象を併せ持つ彼の作品の数々は、異文化の間で悩み、もがきながら研磨された、彼の人生の賜物と言えるのかもしれない。

イサム・ノグチAKARI

35年考え続けた「AKARI」

今回出会った「AKARI」は、そんなノグチが35年もの歳月の中、ライフワークとして取り組んだシリーズで、その種類は200以上に及ぶ。1951年6月、長良川の鵜飼を見物するため岐阜を訪れたノグチは、そこで岐阜提灯に興味を持ち、尾関次七商店(現オゼキ)の提灯工場を見学。なんと次の日の晩には、2種類の新しい提灯をデザインしたとのこと。ノグチが岐阜提灯に興味を持ったのは、それ以前に、研磨による輝きではなく、自ら光る彫刻作品「ルナー」に取り組んでいたことからだった。岐阜提灯の単純かつ柔軟な制作工程に、このルナー彫刻を日常に取り入れるという新たな展開の可能性を見出したのだという。

美しい日常、用を備えた芸術

「僕は自分の作品に『AKARI』と名づけました。ちょうちんとは呼ばずに。

太陽の光や月の光を部屋に入れようという意味から『明かり』という言葉ができ、漢字も日と月とで出来ています。

近代化した生活にとって、自然光に近い照明は憧れであり、和紙を透かしてくる明かりは、ほどよく光を分散させて部屋全体に柔らかい光を流してくれる。“AKARI”は光そのものが彫刻であり、陰のない彫刻作品なのです。」

(AKARI Light Sculpture by Isamu Noguchiより)

イサム・ノグチAKARI

1926年に柳宗悦・河井寛次郎・浜田庄司らによって唱えられた「民藝運動」をご存知だろうか。この運動は、職人の手から生み出された日常の生活道具を「民藝(民衆的工芸)」と名付け、美術品に負けない美しさがあると唱え、美は生活の中にあると語るものだった。ノグチの作品である「AKARI」は、60年を経た今でも量産化することなく、伝統工芸である岐阜提灯の技術によって、職人がひとつひとつ作り上げている、まさに「民藝」だ。

一方でこの照明は、様々なデザインに取り組みながらも一貫して「彫刻家」を貫いたノグチが、長きに亘り挑戦し続けた彫刻作品でもある。作品を商品化することは芸術に対する冒涜だという批判もあったが、それでもノグチはたくさんの人にこの「明かり」を届けることを選んだ。ノグチは人々を光のもとに集めるのではなく、人々の元に光を届け、美しい日常を実現したのだ。

人間の真理を照らす

憧れを所有する。太陽と月を暮らしの中に添える。
時代や国が変わろうとも、人々が望むものはそう変わらない。

日本とアメリカ、芸術と民藝、伝統とモダン。様々な相反を乗り越えたノグチの作品は、余計なしがらみを一切取り去り、まっすぐに真理を照らしているように思う。

個性が氾濫し、凡庸に悩む今、この明かりが在るべき姿を諭してくれるかもしれない。
今も昔も人々を導き得る、想いを感じる名作家具だった。

イサム・ノグチAKARI

AKARI(71405 33N+ST2)

  • デザイン:イサム・ノグチ
  • シェードサイズ:巾 φ46cm/高 160cm
  • 素材:鉄・竹ひご・和紙
  • 電装(ST2仕様):LED電球40W相当 電球色 2灯式
Information

撮影にご協力いただいた IN THE LIGHTさんの記事はこちら!

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