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次世代モクバン | 萌える建築

次世代モクバン | 萌える建築

オオハラ ユキエ

今回の建築

次世代モクバン

印象的だけど本質的。単純に建築として一風変わっているだけではなく、そこから豊かな生活を生み出すのが、藤本壮介流「新しい豊かさを生む建築」。藤本はこれまでに住宅から図書館まで幅広い建築を生み出してきた。シンプルながら「その手があったか!」と思わせる完成形は、もはや嫉妬に値する。意匠と機能、住み心地の微妙な関係、絶妙にバランスの取れた作品は筆者が最も憧れる建築家の一人である。

藤本が生み出す建築から感じる『自分が本当におもしろいと思っていることを正直に伝えること』。

一目見た時の衝撃はもちろん、じっくり眺めてみると殊更に、人間ってこんなふうに生きても良かったんだと気付かされます。

今回の萌え建のターゲットは、そんな藤本が熊本県葦北郡芦北町に建築した作品「次世代モクバン」。日本三大急流 球磨川を眼下に、正面に槍倒しの瀬、球磨の山々に囲まれてた森林と急流のライブスポット。宿泊施設「球泉洞休暇村」内にある。車を降りるとそのロケーションに圧倒された。某アニメーション映画に出てきそうな雰囲気を纏っている。

球磨川の流れと切り立った岩壁 “ 槍倒しの瀬 ” が見渡せる素晴らしい景観に建つ

目当ては聳える木造バンガロー「次世代モクバン」。木材の可能性をテーマとした作品だ。350mm 角のスギ材が積み上げられている立体的な空間で、生み出された段差の使い方は多岐に渡る。角材は壁であり床であり天井でもあり、更には机であり椅子でありロフトでもある。単純な木材が創り出す多様的な空間は、過ごす人がその用途を決める「生きた建築物」である。

▼ photo by Jeff Gaines ▼

かつての楽しげな空間の面影はない。

2005 年にくまもとアートポリスのコンペに選ばれた当建築、新建築にも取り上げられ、話題性もある。しかし場所柄、夏季が賑わう宿泊施設のため、閑散期は建物の傷みが放置されやすい状況。白く乾いたり、苔でくすんだ角材、暫く手入れされていない様子だった。優れたデザインの建築であっても、実は活かすも殺すも人間の運用次第であることを強く感じた。

バンガロー棟の裏ではシイタケ栽培が盛んだった。次世代モクバンからはまだ微かに木の香りがした。木はまだ生きている。建築を諦めかけているのは人間だけのようだ

もうひとつのモクバン「モクバン R2」

球泉洞休暇村にはもうひとつの『くまもとアートポリス』バンガローがある。こちらは全体が FRP で覆われ、レース状の木の隙間からは光が室内に入る。熊本産のスギを使った木のレースは幅 800mm でパネル化された構造体になっている。こちらは現在使用可能な唯一つのバンガロー。約6畳の広さでキッチン、シャワー室、トイレを設備しています。収容人員:5名。詳しくは下記 URL か『球泉洞』で検索してください。

https://www.kyusendo.jp/kyusendou/kyukamura/

▼ 写真は球泉洞 HP より ▼

日中は外光が奥行きのあるレースで間引きされ和らげられて、屋根と壁の無数の孔から室内に降り注ぎます。
日が暮れてからは室内から灯りが漏れ、建物全体が透かし細工のオブジェとなって周囲の景観を彩ります

《data》

くまもとアートポリス「次世代モクバン」
球泉洞休暇村バンガロー「Final Wooden House」

設計: 藤本壮介建築設計事務所
施工: 株式会社 田中組
施主: 球磨村森林組合
2008 年 7 月施工

設計/ 藤本壮介 | Sosuke Fujimoto

1971年北海道生まれ。東京大学工学部建築学科卒業後、ニート同然な状況下において、孤独に設計活動に勤しんでいた。しかし 2000 年 2 月、青森県立美術館設計競技 2 位(優秀賞)受賞を機に人生は一変し、建築家として華々しくデビューした。2008 年 2 月、「情緒障害児短期治療施設」(2006 年竣工。北海道伊達市)で 2008 年度日本建築大賞を受賞。藤本壮介建築設計事務所主宰。

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