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LOG | ホテル部

LOG | ホテル部

オオハラ ユキエ

ホテル部、はじめます。

一言に「ホテル」と言っても、そのスタイルや意味合いも多岐に渡るようになってきたと思います。旅の手段であった”宿泊”は、今や目的ともされるようになり、”泊まる”ためにその土地へ足が運ばれるようになりました。私も例外でなくその一名。ホテルを訪れてはその世界に浸り、家に帰っては旅路を振り返る。この体験を、感動を、日々の暮らしにも活かすことはできないものか…。ということで、旅の記録と感動の捌け口、LogicZine「ホテル部」を創設します。

潮香る風、すっとした空気。こんなにも爽やかで穏やかな現実があるものなのかと思わせる、尾道。快晴も有り終始この上なく気分が良かった旅のお話。昨年秋頃の事ですが、記録として語らせてください。

尾道旅の目当てはLOG。名は「Lantern Onomichi Garden」から由来する。ホテル・カフェ・庭としての機能を備える、旅人と住民が交錯する場所。かつてはアパートメントとして使われていた建物を活用しています。

訪れたのは肌寒い季節。道中は坂道で、時間以上に道のりは長く感じます。指先まで冷たくなった頃にやっと辿り着いたレセプション。あたたかい花梨のはちみつ漬けでお出迎えしていただきました。

冷えた身体はじんわりと解され、スタッフの皆さまの気立ての良さに心まで溶かされるようです。おもてなし、佇まい、素材感。優しく包み込まれるような感覚が嬉しく、いちいち全てに拍手を送りたくなってしまいました。毎日がこうであって欲しいと切実に想う居心地の良さ。ここは”住みたい”ホテルだ、と思いました。

肌に馴染む客室

床・壁・天井は全て和紙。什器も自然素材で作られたものです。手触り、足触りが心地よい。

手書きのメッセージ。ほっこり嬉しい。

お布団もかるく、でもとてもあたたかく、夜はぐっすりと眠りに落ちてしまいました。

お部屋が広いわけでも、豪華なインテリアが揃えられえているわけでもありません。

でも十分に贅沢で、それでいて穏やか。満ち足りている、と感じました。

風の抜ける図書室

海を切り取る窓が美しく、まるで絵画の中にいるようです。

この建物で一番の眺めを取れる場所。より多くの人にこの景色を見てもらうため、客室ではなく誰でも利用できるスペースとしたそう。

設計プロセスが展示されている資料室

設計・監修はスタジオ・ムンバイのビジョイ・ジェイン氏。資料室には、建築に使う素材や色、家具、に纏わるサンプルや模型、写真などが並んでいました。

ビジョイ氏の信念は「人の手を掛けてつくりあげる」こと。訪れた時期もホテルスタッフの手によってお庭の石がひとつひとつ埋められている最中でした。

自動化や効率化が進む現代ですが、人の手による作業や時間を掛けて準備されたものには、かけがえのない豊かさが宿ることがあると思っています。その行為の中身は決して”手間”ではなく、建物やモノへの”想い・エネルギー”へと変換されていくのです。

LOGの什器には地元職人の技術が使用され、建築には自然素材が使われています。尾道の人・歴史・文化に寄り沿い、環境に溶け込む場所が実現されていました。

LOGの外壁は土と漆喰に顔料を混ぜたもの。何度も色の検証を重ねた跡
LOGの外壁は土と漆喰に顔料を混ぜたもの。何度も色の検証を重ねた跡
「新道アパートメント」時代の写真。当時は若い家族が多く住んでいた
「新道アパートメント」時代の写真。当時は若い家族が多く住んでいた

暮らしの哲学

天候に恵まれたこともあり、落ちる影が良く、なんでもないところがなんとも美しく見えます。空間の光の表情を教えてくれる、レンブラントの絵画のような場所だと思いました。

朝から日暮まで、春から冬まで、過去から今日に至るまで、目の前にある光景は今この一瞬でしか存在しえないものです。人の手で検証を繰り返し、時と共に用途を変える建物。影の形、葉の靡き、隅々まで見逃してたまるものかと釘付けになってしまいます。

そういった”一瞬の尊さ”を楽しむ心は、日々の暮らしの中でも大いに活躍します。毎日何気なく窓から見ている景色、遠くから聞こえてくる声、少し視点が変わるだけで日常は全く違って見えるものです。

LOGは、様々な壁を越えた普遍的価値を探り、表現する場所。その哲学は建築だけにとどまらず、現代の生き方や暮らし方全般に関わるものでしょう。人生の豊かさに係る感覚を深めてくれる場所でした。

夜が近づくにつれて、

じんわりと明かりを灯すLOG。

 

しなやかな暮らしの哲学を教えてくれる場所。

 

尾道の人を、土地を、未来を、

やさしく照らすのでした。

《 hotel 》

LOG / 広島県尾道市東土堂町

番外編

寄り道した岡山で偶然出会ったホテル、隣の建物からつい覗き込んでしまいました。入室は宿泊者のみとのことで詳細は謎に包まれたまま。ふとした時にぶり返すように気になってしまうのもまた旅の良さです。

photo garalley

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