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オモケンパーク/ 萌える建築

オモケンパーク/ 萌える建築

オオハラ ユキエ
  • 建築に萌えるロジックスタッフが身近な建築を紹介する通称 "萌え建"
  • 今回は2019年6月に熊本市中央区上通アーケード内にオープンした、話題の「オモケンパーク」です
  • WORDS & TITLE DESIGN by Yukie Ohara
  • PHOTO by Dai Hashimoto
  • RESEARCH by Tatsuhito Yamashita,Mayumi Tange,Yukie Ohara

今回の建築

オモケンパーク

熊本イチの繁華街、熊本市中央区上通アーケード内にオープンした「オモケンパーク」。商店街に突如現れた「公園」の佇まいに、その前を通るものは思わず視線を奪われます。人々の目を奪う美しい建築の様相はもちろん、元は「ビル」だったこの場所を「パーク」として開いたきっかけまでその歴史を辿りながらオモケンパークの秘密に迫ります。

今回は運よくオモケンパークディレクターの面木(オモキ)さんに直接お話を伺いさせていただきました。

「建物づくり」の前の「場づくり」

オモケンパークの成り立ちはいくつかのフェーズに分かれる。

古くは「面木漆工場」、戦後は「オモキヤ靴店」そしてテナントビルである「オモキビル」。業態を変えながら空襲や水害に耐え抜くこと100年以上。そこには木造と鉄骨の混構造の建物が存在していました。2016年4月、突如襲った熊本地震によりビルはやむを得ず解体。西南戦争以来の更地となります。残されたのは震災を乗り越え40年ぶりに湧きだした井戸。井戸は熊本のまちに潤いをもたらし、そして人の集う場所となってきました。起きた出来事は変えられないけど、受け入れ方は変えられる。「この井戸は起点になる。夢を実現するチャンスが来たんだ。」この場所をずっと大切に想ってきたオモキさんは前を向いたのでした。

莫大な費用をかけた商業ビルを建てても、生きてるうちに返済しきれるかもわからない。もっと自分の身の丈に合った規模で、なんなら建物は建てずとも、もっとわくわくできる場所になれるはず。この場所の再生は建築前から始まっていたのです。

「マチナカでも自然を感じ、文化を発信できる場所にしたい」

熊本の人ひとりひとりが主役となるような、そんな場所にしたい。ハードは繋いだ人脈の上に作るのがいい。まずは人の磁力を強める活動を始めた。2017年8月、オモキビル跡地一発目のプロジェクトは坂口恭平さん(作家、建築家)と養老孟司さん(解剖学者、東京大学名誉教授)によるトークセッション「モバイルハウス計画in上通り」でした。商業ビルが立ち並ぶ上通り内で、「街中にビルではなく森をつくる」実験がスタート。その後もトークショー、古着フェス、夜市など、如何にこの場所を活かすか、実験を繰り返します。そこには街のイベントスポットとしてひと際にぎわう人溜まりが生まれ、活動を通して多くの人の目と人脈が集まりました。このマチのためにできることを探し続けた、オモキビル跡地ならではの場づくりです。

おもわず一目ぼれしてしまうファサード

そして2019年6月に満を持してオープンしたのがこのオモケンパーク。設計は矢橋徹建築設計事務所。その外観は一目で心を奪われる、美しい造りとなりました。ディティールを覗いても余計な線が少なく、カジュアルなのにどこか品を漂よわせます。建築に使われた素材は決して高価で贅沢なものではありません。しかし全て“本物”であることにこだわりました。手触りや質感、そしてこの空気感は、この”本物”にこだわったからこそ味わうことのできる心地よさです。是非現地に足を運んで触れてみてください。

手すりのつなぎ目は綺麗に溶接されています。
框(かまち)やCLTの木口面など、余計な線は仕上げで全てカバー。
壁・床に使用されている素材は屋内・屋外ともに熊本小国杉のCLTパネル。海外ではこのCLTパネルを使って木造高層ビルの建設計画もあるそう。
カフェテーブルは竹と杉バーク(樹皮)を原料とするナンカンボードという環境循環型の素材。手ざわりもやわらかく、ほっとひと息つけるテーブルです。

いつまでも、長く愛したいからこそ

オモケンパークには設計者、施工主のほかに、「協力者」が存在する。オモキさんのアウトドアの師匠でありアップサイクル(※)の達人、綱田誠さん。天井のないテラス部分には、綱田さんのヨット整備の技術を活かしタープが掛けられる予定。

※アップサイクル(upcycle)=廃物をそのまま再利用するのではなく、商品としての価値を高めるような加工を行うこと。古布や廃材を用いて、しゃれた小物を作るなど。

屋上のステップとステップを繋ぐ階段は、オモキビル時代に使われていた屋根裏部屋へ繋がる階段のリメイク。
タープが掛けられる予定のパークの庭部分。風が通り抜けて心地よさそう。

井戸の蓋は、オモキビル解体後の更地に敷いていた枕木。井戸だけでなく敷地各所に、オモキビル時代の材が再利用されています。枕木は簡単に外せて、使わない時は分解できる、場所を取らないつくり。作るだけでなく、如何に次に繋げるか、そしてどう終わっていくか、一歩先をいく視点でのものづくりだと感じました。

できるだけエコロジカルに。コストも掛け過ぎず。
ここには綴り切れないほどにたくさんのお話を聞かせていただきましたが、オモキさんの話は、建築、普段の働き方、趣味のアウトドア、どこをとっても一貫してミニマルでシンプル。けれどもぶれない姿勢、絶対的な信念、強い想いが感じられます。

Sence of wonder

レイチェルカーソンの遺作『センス・オブ・ワンダー』。
全ての子どもが生まれながらに持っている「神秘さや不思議さに目を見はる感性」。いつまでもその気持ちを忘れないために必要なことは「わたしたちが住んでいる世界の喜び、感激、神秘などを、再発見し分かち合ってくれる人がそばにいる」ことだと言います。オモケンパークもそんな「センス・オブ・ワンダー」な空間を目指します。

「こういうものを見て、なんかいいなあって感じて欲しい。決して高いところから押し付けるわけではないけれど、ここに来たらおっとなんだか違う世界があるぞと、気付いて欲しい。みんなが自然と”考える”ような場所にね」。実際ここに滞在していると、上通りを歩く9割の人がこのオモケンパークに目を向けることがわかります。

オモケンパークの屋上は、床に木が張られたフリースペース。席もなく、自分のスタイルで好きに過ごす場所となります。オープン初日、この屋上で寛ごうと自分のヨガマットを持ってきた人がいたそう。こちらから提供するものだけでなく、自分なりの過ごし方、使い方を見つける。逆に気付きを与えてくれるような、そんな人が集まる場所を理想とします。

カフェ?イベントスペース?用途は無限大

オモケンパークの1階に入るのは、カフェ「Park Side Coffee & Tee」。驚いたことに、コーヒーカップはもちろん、ストローさえも捨てない素材でドリンクを提供してくれます。温度感が舌まで伝わる飲み心地に感動。もちろん食事に使用されるのも、阿蘇のひばり工房さんのお肉をはじめとした、厳選された食材達。建物本体との親和性の高いコンセプトに納得します。これは特に指定があったわけではなく、オモキさんが一貫して語り続ける世界観に共感したショップ自らの選定。

オモケンパークは土地の広さに対して「余白」部分の割合が非常に高くなっています。これからはイベントスペースとしての貸し出しも予定。商店街には売り手と買い手という関係性がつきものですが、ここでは一般のお客さんもやりたいことを発信することができる場所となるのです。キーワードは「多様性と寛容性」。街の人がフラットな関係で繋がることが目的です。

屋上部分は3層に分かれる。庭部分でイベントをすれば、屋上に腰を掛けた状態でも愉しむことができます。ステップの下半分は窓ガラスになっていて、そこから1階に光が美しく差し込む造り。
屋上部分は3層に分かれる。庭部分でイベントをすれば、屋上に腰を掛けた状態でも愉しむことができます。ステップの下半分は窓ガラスになっていて、そこから1階に光が美しく差し込む造り。

まちの人ひとりひとりが主役になれるような場所に

「オモケンパーク」はオモキさんの大切な大切な想いが込められ、それを余すことなく実現されている建築。そして建築家、建設会社、テナントオーナー、その他数多に上る協力者、多くの人がオモキさんの世界観に共感し成り立っているまちのみんなの「場」。オモケンパークの成り立ちは建築行為だけでなく、想いの積み重ねによるものなのであることを感じました。

オモケンパーク

ディレクター:面木健
設計:矢橋徹建築設計事務所
施工:熊本建設
竣工:令和元年(2019)5月19日

今回取材にご協力いただいた面木健(たけし)さん。7月23日(火)に開催される市民大学C.Schoolにてゲストとして登壇していただきました。今話題のホットな人物。なかなか直接話を聞ける機会も少ないはず。レポートが公開されているので、ぜひチェックを!

面木 健さん/C.school

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